【読書感想】「孤独の哲学」岸見一郎/猛毒から毒くらいにはしたい
今回は、中公新書ラクレ「孤独の哲学」(岸見一郎(著))の読書感想です。
結論
- 孤独はリスクが大きい。
- 孤独には、寂しいという感情と知性の2種類がある。
- 本著では孤独の克服方法として、本当の繋がりを大切にすること、経験を通じて自信を持ち、自立することなどが述べられている。
- ブログ主は、孤独のハードルを下げたり、身勝手さを自覚したりすることで、苦しみを軽減できると考えている。
目次
基本情報
著者は、哲学者の岸見一郎さん。大ベストセラー「嫌われる勇気」でも有名な方です。
本著は、『孤独』をテーマの中心に据え、対人関係や、いずれ訪れる死との向き合い方などを掘り下げて論が展開されていきます。
自分なりに『孤独』と向き合ううえで、ヒントをたくさんもらえる書です。
読もうと思った理由
『孤独』の猛毒を毒程度には減らしたいからです。
さらには、孤独であることのリスクを
・1日たばこ15本吸うことに匹敵する
・アルコール依存症であることに匹敵する
・運動をしないことよりも高い
・肥満の2倍高いと結論づけた。同教授の研究結果のほかにも、孤独と疾病との関連を指摘した研究結果は数多くあり、うつ病や統合失調症、薬物やアルコールの乱用、心臓病、血管疾患、がんなど多岐にわたる病気のリスクが孤独によって高まることがわかっている。
https://biz-journal.jp/2020/03/post_145597.html
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私は、ほぼ生涯独身であることが確定しています。
今までの人生を通して、自分は人から好かれにくい、周りに人が寄ってきにくいタイプだという確信があるので、今後も『孤独』には必然的に向き合わざるを得ません。
否が応でも目に入るまぶしい光景に心痛める日々を、少しでも楽にしたい。
そこで何か出来ることはないか、ヒントを得るため本著を購入しました。
個人的見どころと感想
『孤独』の2つの意味
本著では、『孤独』は2つの意味があると説明しています。
- 寂しさ=孤独感
- 知性
1の意味は一般的な意味です。私が感じる孤独もこれです。
2の意味はどういうことでしょうか。
哲学者の三木清さんの言葉を引用して紹介しています。
感情は主観的で知性は客観的であるという普通の見解には誤謬がある。むしろその逆が一層真理に近い。
感情は多くの場合客観的なもの、社会化されたものであり、知性こそ主観的なもの、人格的なものである。
真に主観的な感情は知性的である。孤独は感情でなく知性に属するのでなければならぬ。(p177)
日常会話風に翻訳すると
「感情はだいたいみんな同じもの。だけど、知性を発揮し、みんなが普通に感じない、考えないような感情(思い)を持つ人は孤独になりやすいから、孤独は知性なんだよ。」
という感じでしょうか。
知性の高さの現れたる孤独もあるということをおっしゃっているのだと思います。
『孤独』の克服方法
本著で述べられている克服方法
- 孤独の克服には繋がっているという感覚が大事。
- 外的条件(年収・地位・外見など)での繋がりは、消えてしまっても気にしない。利用し、利用される関係なので、脆く、不安定な関係だから。
- 自信を持ち、自立することで本当の繋がりを築ける。
- 人間関係を含む環境を作っていくことで自信が生まれる。その際に、人と比べない。自分で作る。
- 自己の内面を深く見つめ、心を研ぎ澄ませることも自信、自立に重要。自分軸を持つ。
このようなことをおっしゃっているのだと思います。
結局行き着く先は、酸いも甘いも様々な経験を積み、内省を繰り返すことが必要という意味でしょう。
ここで難しいのは、独りよがりな言動の結果な孤独、知性だと勝手に思い込んでいるような孤独にならないようにする必要があるということです。
改めて別記事にして考えたい内容です。
私の考える克服方法
- 孤独のハードルを下げる
- 身勝手さを自覚する
- 孤独を選好している可能性を考える
- 孤独を感じるものは感じるから仕方ないと考える
の4つです。
孤独のハードルを下げる
私の場合、頻繁に連絡を取り合ったり、長時間雑談出来たり、心から理解し合えているような関係がないと孤独である、という思いがわりと強くあります。
深い繋がりがないと、孤独ということです。
ですが、もう少しハードルを下げて、ゆるい繋がりでもよしとするのはどうかと考えました。
例えば、最近の私の例ですが、好きな漫画家さんの体調が回復されたことに喜びを感じました。
別に作者さんからすれば赤の他人ですが、作品の提供者と読者というゆるい関係があります。
はっきりと意図せずにいる、どこかで思い思われる、ゆるい繋がりというのも、あってよいと思うのです。
アイドルに熱中したりするのも、一つの繋がりと言えば繋がりでしょう。
距離感さえ間違えなければ、そういう繋がりも認めていいかなと思います。
そうすることで、孤独の寂しさを軽減できるかもしれません。
身勝手さを自覚する
これは私にあてはまるのですが、たいして努力もせずに深い繋がりを求めている自分に気付き、身勝手だと感じたということです。
コミュ強な人や友人が多い人だって、友人の誕生日を覚えていてくれたり、困ったときには相談に乗ってくれたり、「そんなことも見てくれているのか」と思うようなことを見てくれていたりしています。
自分は人に与えられるものがないのに、都合よく考えすぎなのです。
そういった身勝手さを自覚することで、ただ人と繋がりたいという欲望にブレーキを掛けられそうだと考えました。
孤独を選好している可能性を考える
上記の「身勝手さを自覚する」で見た通り、友人を作り、関係を維持することは努力が必要なことがあります。
では何故、自分はそうしないのか。努力はこれまで色々してきたつもりですが、さらなる努力はやはりつらいからだと思います。
恒常的に、抑揚のない声を変えて明るめの声にしたり、相手に合わせる努力をしたりするのはつらい。
だから、ある意味今の自分を好き好んで孤独になっているとも言えるのではないかと思うようになりました。
そう考えると、少しだけ、孤独も案外悪いものではないと考えられるようになりました。ただ、知性とは程遠いですが。
孤独を感じるのは仕方ないと考える
これまで見てきたことの実践で、少しは孤独の苦しみを軽減できるかもしれません。
しかし、私の場合、現実にまぶしい光景(人と人とが仲間睦まじい様子など)を目の当たりにすれば、どうしても心穏やかではいられません。
理屈で分かっていても感情では納得しないのです。
だから、孤独感を感じるのは仕方ないと考える。そのようにプログラムされているのでしょうがないです。
孤独感を感じてしまっても抵抗しないでスッと受け入れ、心に沁み渡らせることで、かえって楽になれる。
私の場合はそういうことがありました。
まとめの感想
本著によれば、「読書する人は孤独ではない」そうです。
著者の方と対話している感覚があったり、追体験出来たりと、いろいろと考えさせられるので、幾分孤独感は軽減されますね。
一朝一夕には孤独を克服出来ないですが、生涯を通して、真の意味での自立を見つけていければと思いました。
孤独を中心に、人生を考えるうえで、多くのヒントをもらえた一冊でした。